『全ての国民は法の名の元に皆、平等である』。憲法に記されたその文言が真実、正しいか否かはともかく。日本は民主国家であり法の名の元に動いている国です。
長い歴史の中で民法、刑法共に大きな節目の中で若干の変化はあれど、法律は戦前から世にありそれを持って国は動いてきました。
ですが法曹の世界も他の業種と同じく、やはり男性中心の社会です。その中に置いて日本で初めて現在で言う司法試験に受かり、そして女性初の裁判官に就いた女性がいます。
その女性の名前は三淵嘉子さん。戦前、当時の女学校から、明治大学の女子部にて法を学び、苦労に苦労を重ね、その任に就いた女性。その女性の半生を描いたドラマが今、NHKで朝の連続ドラマとして放送してます。
女性は常に男性の一歩、後に下がり、それを敬い奉る立場にいる存在。その事実に誰もが異を唱える事なく、その事実が確固たる常識として確立していたその時代に自らの意思で、自らの力で司法の世界に趣き、法曹界の常識を覆した女性。
世間の中で弱い立場である者の側に立ち、法律の観点から多くの女性を助ける事に尽力した方。その人生は波乱に満ちたものであり、その道程は並大抵の苦労では無かった事は想像に難くはありません。
その間、日本も含み世界的に大きなトピックとして1つ挙げるとしたなら、どうしてもそれを避ける事ができない物が1つあります。それは戦争です。三淵さんは戦前、御結婚されています。ですがその後、夫は戦地へと趣き終戦の前に戦死されています。
家族、友人の多くも戦争で亡くし一時は、絶望の末、法曹界から身を引く事も考えられたそうです。ですが自分の子供や身近に親しい者もいて、また終戦後の悲壮的な日本の惨状を目にし、やはり法律を元に弱き立場の方を助けたいという想いから要職へと復帰されたとの事です。
戦争が終わるきっかけとなった、広島、長崎に落とされた原子力爆弾。三淵さん他の数名の方は、多くの被害を齎した原爆に対し国の原爆被害策は不十分と考え、国に対してその事を明言されたそうです。結果は原告の請求は棄却されました。戦争被害者に対しての損害賠償求権も認められないままだったそうです。結果は敗訴しましたが、この事は日本人が初めて行った、アメリカ軍による広島、長崎への原爆投下は国際法に違反するという指摘の最初のそれとして記録に記された物になりました。
発端がなければ、後には続きません。原爆に関しては後世の今でも大きな事実として問題提起として受け継がれています。その事はこの先の憲法の動きにも大きく左右される物になるのかもしれません。
三淵さんは裁判官として尽力される傍ら、家庭裁判所の所長としても従事され、戦争孤児に対して彼らを救済する事を目的とし、尽力されたとの事です。
女性が法曹界に携わる事など問題外という常識を覆し、虐げられた状況にいる女性、子供のために法という名の武器を持ち、人を守る盾とした日本で初めての女性。今も語り継がれるその歴史上の人物をモデルとした件の朝の連続ドラマは、女性のみならず多くの方に支持され好評を博しているようです。そのドラマのタイトルは『虎に翼』と言います。豪胆な虎という存在が、法という名の翼を持つ事で、殊更に高みに上がる。そんな意味合いがドラマのタイトルにはあるとの事です。
何かと戦うには他者を凌駕する武器と身を守る盾が必要です。自分のみならず他人を守るそのためには尚更の事と思います。現代に置いてもそれは同じく変わらぬ事なのかもしれません。どんなに強い存在であっても、特筆すべき持ちうる知識、技術等の付加が無ければ、自身の目的を達する事は困難な事と思います。
何かしら指針とされる目標があってこそ、人は武器であり盾でもある翼を求め、それを得るための努力を怠らない、或いは諦めない。エポックメイキングである方の存在も、令和の今の全ての人の想いも、或いは大きな差は無いのかもしれません。
『虎に翼』は九月の末まで放送予定です。未見の方には、もしよろしければ、是非。